思いがあふれている親子。そして優しい時間
今回のブログは、息子様とお母様の、素敵なお話を紹介したいと思います。
認知症の進行により、思い出せなかったり、理解できなかったり、何度も同じことを聞き返すN様。
『母がこうなるのは認知症だからです。分かっています』と仰る息子様。
しかし、息子様はそんなN様と対面するたびに、
『なぜ?どうしてわからないの?』といら立ちを押さえられず大きな声になっています。
ある日のこと、息子様の大きな声が聞こえてきました。
N様に分かってほしいという思いの表れだったでしょう。
N様は一生懸命に話し掛ける息子さんの手を払いのけようとしていました。
そのN様の表情には困惑とやり切れない思い、それと息子様の思いに答えることが出来ない苛立ちのような悲しみに似た何かが見て取れました。
見兼ねたヘルパーが介入し息子様をたしなめます。
息子様が帰られた後N様が言いました。
『あの息子は優しい子なんです。正直な子なんです』と・・・。
親子にしかわからない深い思いがあるのです。
そして・・・
突然N様の血圧が急に下がり救急車を呼びました。
目を閉じ朦朧としたN様に、ヘルパーが何度も声を掛けます。
『息子は来ませんよ…』と言葉を繰り返すN様。
息子様が病院へ駆けつけました。
『お母さん!!○○が来たよ!分かる?』と・・・
N様はうっすら目を開け、息子様を確認しました。
『来てくれた…』
息子様が優しくゆっくりとした口調で話しかけ始めました。
『お母さん 覚えている?』
『お母さん 大変だったね。苦労したね』
『お母さん 昔こんなことがあったね』 と・・。
何回『お母さん』と問いかけたでしょう。
N様は、その度に息子様と同じようにやさしい口調で返されます。
そこには、困惑やいら立ちはもちろんのことネガティブな言葉一つさえも存在しませんでした。
暖かさに包まれたとても優しい時間が流れました。
今でもN様と息子様の素敵な関係は続いています。
この内容は、2015年12月29日の日和館ブログをコピーしました。